おかあさん③
「おかあさんの誕生日覚えてる?」
「覚えてるよ、1月23日だよ」
「おとうさん、それ、私の誕生日だよ」
「1月23日だよ」
おとうさん、ついにボケちゃった?!?
「うららちゃんと同じ誕生日なんだよ」
「。。。。。」
ビックリしたけれど、嬉しかった。おかあさんは、自分の誕生日が来るたびに私のことも思い出してくれてたんだよね、きっと。
おとうさんは、思い出すように、でも、いろんなことをハッキリと覚えているようでした。両親は結果的に上手くいかなかったけれど、確かに私を生んでくれたおかあさんのことをおとうさんが愛した事実は存在するんだ、とそんな時間が伝わってくるような不思議な感じがしました。嬉しかった。
「おかあさんが好きだった唄があったんだよ」
「なんて言う唄?」
「浜千鳥っていう唄だよ」
父が歌い始めた。
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青い月夜の 浜辺には
親をさがして 鳴く鳥が
波の国から 生まれ出る
ぬれた翼の 銀のいろ
夜鳴く鳥の かなしさは
親をたずねて 海こえて
月夜の国へ 消えてゆく
銀の翼の 浜千鳥
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帰りの車でYouTube で聴いてみた。私ひとりだけ、誰にも聞こえない車内、号泣した。そしてスッキリした。最近よく泣けるようになった気がする。グッドドクターの山崎賢人くん(はあと)が言ってたみたいに、泣くことは科学的にもメリットがいっぱいだそうです。
おかあさんが好きだった唄… 最初は自分のおかあさんのことを思って歌っていたんだと思います。そして、子どもと離れ離れになってからは、私たちのことも思って歌っていたような気がします。きっと。
私は月夜の晩に海に行くのが好きです。いつの頃からかわからないけれど、海に映る月の光を見るのが好きです。(娘にもそういう名前を付けました。)どんな思いで見ていたのか自分でもわかりませんが、多分〝無〟だったと思います。でも、何か懐かしいような穏やかな気持ちだったと思います。
おかあさんの思いが私に伝わっていたんだ。そう思いました。離れていても言葉はなくても繋がっていたんだ。そう信じたいです。